かぜと抗生物質
かぜと抗菌薬(抗生物質)
かぜで当院を受診された方の中には、
「ときのクリニックで抗菌薬(抗生物質)を出してもらえなかった」と感じた方もおられたかもしれません。
通常、抗菌薬はかぜには無効です。抗菌薬が有効なのは一部のかぜ(溶連菌・マイコプラズマなど)であり、それを判定するために医師は診察・検査を行います。ほとんどのかぜ(インフルエンザや新型コロナウイルス感染症も同様)は、自己免疫の力で回復するのを待つよりありません。
この「かぜ抗菌薬問題」。医療者と一般の方、双方に原因がありそうです。
そんな折、先月(2023年9月)抗菌薬意識調査のレポートが公開されました。
抗菌薬意識調査レポート
「抗菌薬はかぜに効かない」という大前提の上、一般の方の「かぜ」「抗菌薬」に関する認識を毎年調べているものです。私が興味深いと感じた項目をいくつか取り上げてみます。
抗菌薬(抗生物質)の知識が不十分
抗菌薬(抗生物質)という言葉は8割の人が聞いたことがあるが、20代の認知率が6割と最も低い(!?)
「抗菌薬(抗生物質)はウイルスをやっつける→No」を正しく認識している人は約6割
かぜに抗菌薬(抗生物質)は効かない、と正しく認識している人は23%(!)
抗菌薬の不適切使用は減少している可能性がある
自宅保存している抗菌薬(抗生物質)を自己判断で飲んだことある人は2割程度
他人の抗菌薬を飲んだことがある人が1割程度いる。
抗菌薬が有効だと思う病気
インフルエンザ44%(!)、かぜ39%(!)、新型コロナウイルス32%(!)
※インフルエンザ・かぜ・新型コロナウイルス感染症、いずれも抗菌薬は無効です。
一般に薬剤耐性(菌)はあまり知られていない
薬剤耐性(菌)という言葉をきたことがある人は3〜4割
薬剤耐性菌感染症が怖い人は、94%
でも自分が薬剤耐性菌感染症になると思う人は1割
基本的な感染症対策は高水準
オンライン診療、オンライン服薬指導の利用率は低い
オンライン診療を利用したことがある人は3.7%(!)
オンライン服薬指導を利用したことがある人は2%(!)
オンライン服薬指導を利用してみたい人(38%)よりも、利用したいと思わない人(61%)の方が多い(!)
最後に
いかがでしたしょうか?
「ほとんどのかぜに抗菌薬は不要」
これは厳然たる事実ですが、「かぜに抗菌薬を処方する医師がいる」こともまた事実です。
一般の方は正しい知識を身につけ、医療者はきちんとした理念をもって、無駄が少なく質の高い日本の医療を守っていきましょう。